一般財団法人有馬育英会

卒業生便りFROM ALUMNI

奨学金を提供することは、若い才能ある人々が夢を追いかけるための重要な支援手段の一つです。
私たちは、これまで多くの学生たちを支援してきました。
学生たちが将来の成功に向けて最大限の機会を持つことを願っています。

有馬育英会の奨学金を利用し、卒業された皆さまからのお手紙をご紹介します。

手紙

濵田 万葉さん

最前線で戦う、 有馬育英会出身の濵田万葉さん

近畿大学医学部に在学中、有馬育英会の奨学金制度を利用していた濵田さん。新型コロナウイルス感染症に立ち向かっている医療の現状を教えて下さいました。
毎日コロナウイルス感染症の患者様が入院してくる中、「延命」に関しての希望を聞くのが我々医師の仕事でもあります。元気な方の感染が増えているため、一度も「延命」に関して家族で話し合ったことが無い方がほとんどです。 また、家族がいらっしゃらない方に関しては、本人に希望を聞かなくてはなりません。病院によっては延命できる範囲が限られるため、入院する際の条件として組み込まれます。最初にビニール越しに患者さん自身に延命希望を訪ねて、状況によっては希望に添えない可能性もあるという事を伝えた際、いよいよ異常事態だなと実感しました。
コロナ流行前に厚生労働省が推した「人生会議」、当時は一部批判を受けていましたが、コロナ感染で隔離された後は直接話し合いたくても話し合えません。とても大切な議題だなと痛感しています。
第四波で大阪の病床が足りず、入院した中等症の患者さんがどんどん重症化していった時期に、有馬育英会と水天宮の皆様から病院へ差し入れを頂きました。医師も看護師も精神的にも疲れていたので、みんなで大喜びし、心から元気になりました。ご支援ありがとうございました。

私は三十代となり、周りは妊娠・出産ラッシュです。コロナで面会禁止のため、一人で入院・出産する友人を尊敬の眼差しで見つめています。私自身は一人で出産することへの恐怖でなかなか妊娠する勇気が持てずにいます。決意した際は水天宮に子授け祈祷をお願いしようと思います。 私は大阪のコロナワクチン大規模接種会場で問診担当をしておりました。先日コロナ感染し亡くなられた妊婦さんの報道があった後は、妊娠中や授乳中の方もワクチン接種希望者が増えた印象があります。妊婦さんへの問診では、情報を与えて不安を軽減することを意識しました。
妊娠後期にコロナ感染すると早産率が高まり妊婦さん自身も一部重症化することがあるということ、現在妊娠中や授乳中の方のワクチン接種が推奨されており、日本で承認されているワクチンが妊娠、胎児、母乳、生殖機能に悪影響を及ぼすという報告はないことを説明しています。 また、パートナーにも接種をお願いすることが重要と説明しています。
コロナに限らず、病は突然やってきます。とても難しい事ですが、後悔しないような生き方、毎日幸せを感じて生きることができればと思います。


M.Tさん

出身高等学校:福岡県立明善高等学校
卒業大学:大阪大学 外国語学部(2022年卒)

遠方の大学を受験し、入学と同時に一人暮らしを始めたため、経済的負担が大きく、奨学金はとても助けになりました。
大学では学業、部活動、友人との交流など、人生においてかけがえのない経験をすることができました。 特に部活動の面においては、週5回の練習というなかなかハードな活動を引退までしっかりやり遂げることができました。 奨学金のおかげで、有意義な大学生活を送ることができ、本当に感謝しています。
これから社会人としての自覚を持ち社会に貢献できるよう精進したいと思います。

匿名希望さん

出身高等学校:福岡県立久留米高等学校
卒業大学:西南学院大学 法学部 国際関係法学科(2022年卒)

このたび大学を卒業することができましたが、ここに来るまでにたくさんの方々の支えがありました。感謝の気持ちでいっぱいです。
そして春から新社会人として頑張るときにもこの感謝の気持ちを忘れずにしていきます。

佐藤 佑哉さん

出身高等学校:久留米市立南筑高等学校
卒業大学:熊本学園大学 社会福祉学部(2019年卒)

 4年間奨学金を借りて大学へと行かせてもらい、親元と離れ、様々な事を経験しました。大学は高校とは違い、全てにおいて自分の行動が結果へとつながり、自覚を持ち日々の生活を過ごしていかなければならないと感じました。
 アルバイトのし過ぎで学校が疎かになったりもしましたが無事4年間で卒業することが出来ました。4月からは社会人として大学生活とはまた違った自覚を持ち、何事にも責任感を持ち行動して行こうと思います。
 僕自身、この奨学金がなければ大学へ行くことが出来ませんでした。このような周りの支援があるからこそ学校へ行けたり誰かの助けになるんだと思います。支援して下さる方々に感謝し、自分もその立場になれるようしっかりと返還して行こうと思います。

深山 翔平さん

出身高等学校:福岡県立明善高等学校
卒業大学:広島大学教育学部(2012年卒)

「感想・抱負」  経済的に余裕がなかったので、奨学金を借りることで、大学に行けたようなものだと思っています。
大学では、教員になる勉強をするとともに、たくさんの友達と交流し、たくさんの良い思い出を作ることが出来ました。
 今年から、教員として働いていますが、大学で学んだことが活かせる場面が多々あります。
今後は、教員生活になれて、子どもたちの、学びと遊びの完全サポートができるように努めていきたいと思っています。

吉開 朋弘(よしかいともひろ)さん

出身高等学校:福岡県立明善高等学校
卒業大学:京都大学地球工学部(2011年卒)

<奨学生として卒業して>
不況により、親の収入激減。家計の援護に奨学金は非常に有り難く思いました。

<今後の抱負>
工学部大学院に進み、地球環境変化・異常気象・水害などの研究にあたります。

永江 雅和さん

卒業大学:一橋大学経済学部(1992年卒)
現在:専修大学経済学部教授
貸与期間:平成元年~平成4年

有馬育英会奨学金で続けられた合気道

世の中が昭和から平成にうつった頃、福岡県から上京したばかりで、右も左もわからなかった私は、地下鉄東西線の茅場町駅を降り、近代的オフィス街のなかを不安げに歩いていました。オフィス街を抜け、人形町に入ると突然街の風景が一変し、水天宮の参道を中心とした下町の風景が現出しました。その風景の変化と人形焼の甘い香りに、ほっと安心感を覚えた、18歳であった私が「東京の都心にもこのような、温かみのある空間があるんだな…」と、ぼんやりと考えたのはもう20年ほど前のことであったかと、今懐かしく回想しています。

 大学進学が決まったものの経済面に不安のあった私は、担任の先生に、奨学金を紹介してもらえないだろうかと相談に赴きました。そこで紹介して頂いた貴会に平成元年度から四年度にかけて奨学生として支援を受けることができましたのが貴会とのご縁になります。当時の私は「有馬育英会」といいましても、久留米藩の殿様であった有馬家と結びつけもせず、また人形町にある水天宮と有馬家の由来についても思いも及ばない、なんとも無礼でモノを考えない学生でした。汗顔の至りです。

  大学時代の私は勉学そっちのけで、合気道に打ち込みました。高校時代に在籍した剣道部を、怪我で中途半端な形で引退してしまったことへの後悔、武道による心身の鍛錬への未練があったのだと思います。こうして体育会合気道部に入部したのですが、夏や春の合宿では、かなりの費用が必要であり、週5日の稽古のなかで満足にアルバイトをすることもできず、経済的に部を続けてゆくことに苦労を感じることもありました。しかし育英会奨学金を受けられましたおかげで、なんとか無事4年生まで続けることができ、最終的に二段を頂くことができました。

  また部でご指導頂いた有川定輝師範(九段、故人)に接することができたことも、私には大きな経験であったと思います。週に一度、古武士のような風格を湛えた師範と稽古後、お話をするのですが、師範に失礼のないように準備万端整えること、またお話の話題を考えるために、毎週かなりの時間をかけて準備した記憶があります。こうした経験は目上の方に一期一会の精神で接する気構えを学ぶ、貴重な経験になったと思っています。

  大学卒業後、私は指導教官の薦めで大学院に進学し、研究者の道を目指すことになりました。私の専攻する日本経済史は、フィールドワークや聞き取り調査を多用する学問であり、指導教官はもとより、調査の過程で多くの方々のお話をうかがうことがあります。また勤務先の大学ではゼミで数十名、講義では数百名の学生と日常的に接します。どちらにも共通するのは、多くの人と接する仕事であるということ。人見知りや引っ込み思案では、なかなかつとまりません。研究の過程でご縁を得た方や、日常接する学生とも、一期一会の気構えをもって、誠実に接することを心がけようと、精進する毎日です。未熟を痛感することしばしばですが、それでも学生時代に貴会の奨学金を得て、続けられた合気道修行の経験が、私の人と接する姿勢の上で、「柱」になっていることを痛感しております。

  思えば私の学生時代に比べ、大学生を巡る環境は日々悪化の途をたどっているように思えてなりません。100年に1度の不況と呼ばれる昨今、就職難のなかで、学生もアルバイトに追われ、あるいは近視眼的な就職活動に追われ、教養・知性・心身を鍛錬する時間と環境が日々失われつつあることを肌で感じます。国内はもちろん、海を隔てたアメリカでも大不況のなかで奨学金制度の崩壊による学生の困窮が進みつつあると伝わってきます。またご家族の経済状況・健康状況の悪化により、進学を中途にて断念せざるを得ない学生も、その数を増しているように見受けられます。そうしたなかで、貴会がこれからの日本を支える学生生活の支援に長期間にわたる支援を続けられていることには、深い敬意を覚えますとともに、その社会的貢献が疑いなきものであると、確信を抱いております。
  貴会の活動の今後のますますのご発展と、奨学生の皆様のご健勝を心よりお祈り申し上げます。 現在でも大学合気道部の合宿に参加して、汗を流しています。

(前列左端が筆者)